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2007年11月 7日 (水)

良い買い入れ

 今日の熊野町は晴れ。秋晴れの空が戻り、筋肉痛もひき、気持ち良く買い入れへ向かうことができました。行き先は呉市、当店からクルマで20分ほど。お客さまのお宅に着き、早速、本を拝見し見積もりをしました。

 私が見積もりをする際は、まず売り値の合計を出し、それに対していくらお支払いするかという順序をとります。例えば、売り値が同じ10万円であっても、全体的に見て早く売れそうか、それともなかなか売れそうもないのか、または自分の趣味に合うのか、そうでもないのか、などによって買い値は違ってきます。1か月以内に思っている値段で売れるとみれば、7万円出すかもしれません。3年以上かかりそうだと思えば3万円しか出せないかもしれません。書籍の状態も関わってきます。よく「売り値に対し何割くらいで買うのか?」とたずねられますが、一概に何割とは言えない理由がここにあります。

 今日は売り値の合計を「30万円」とみました。これに対する買い値は「15〜20万円」としました。私はまず「15万円」と口に出しましたが、即決はしていただけず結局「20万円」で交渉がまとまりました。私は5万円儲けようと思ったわけではありません。15万円が適正な価格だと考えたのです。その数字を口にしながら、頭の中で上限を20万円と決めていました。

 はじめから20万円と言えば良いじゃないかと思われるかもしれませんが、売り値を30万円とみたものを20万円で買うのは勇気が必要です。例えば今日買って明日売れるとみれば25万円出しますが、そんなことはありえないのが古書の世界です。私は「20万円でお譲りいただけないなら諦めます」と言いました。私にとってはぎりぎりの数字でした。はじめの見積もり、30万円という数字が正しいのかどうか、それが問題となりますが、今回はすべてこれまでに見たことのある本で、大きな誤差は考えられませんでした。20万円で買っては、商売としてはすでに「おいしくない」買い入れといえますが、それでも買わせていただきたいと思ったのは、お売りいただく本のスジが当店にとって良かったこと、そしてお客さまの人柄でした。話をさせていただき、お客さまが本を大事にされていることがすぐにわかりました。それが5万円という幅になりました。

 買い入れにうかがう際、私が心がけていることが2つあります。それは「買い叩かないこと」と「必ずお客さまに納得していただくこと」です。いい加減な値で買い叩くと、その評判は必ず当店にとってマイナスとなるだけでなく、業界全体の信頼を失うことにつながりかねないからです。そして、たとえ売っていただいたとしてもお客さまに不満が残っては同じことです。お客さまと私の評価に差があるときは、なぜその値なのかを説明し、それでも納得していただけないときは、ほかの古書店にも見積もりを依頼されてはどうかと提案します。実際、私より高い評価をする店もあると思います。逆に低い評価をする店もあると思います。それは店主の趣味によるところが大なので、私はただ誠実に見積もりをするしかありません。

 今日は良い買い入れだったといえます。本を知るお客さまによる評価と私の評価が折り合い、結果として買わせていただくことができたからです。このような出会いも買い入れの醍醐味です。

 本をクルマに積み込む作業の途中、その坂道を柿の実が一つ、転がってきました。見上げると、隣家のおばあさんが一人脚立に上がり、庭の柿を取っている最中でした。拾い上げ、落ちた実を渡そうとすると、逆に「持って帰りんさい」と4つも実をくれました。持ち帰って食べたそれは実に甘く、幸せな気持ちになりました。これもまた買い入れの醍醐味です。明日は定休日です。

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